大針ビレッジ通信 4月号(2)

大針ビレッジの魅力
1 企画者に聞く 2 建築士に聞く 3 こんな自然素材が使われている

2 建築士に聞く 1級建築士 大江忍

大針ビレッジは「自然素材」を謳っていますが、本物の自然素材住宅とはどんな住宅であるのかポイントを教えてください。  一口に「自然素材住宅」といっても種類はいろいろあります。
住宅メーカーがよく使う「木の家」という文言を例にあげると、使われている木材は、木を薄く剥いだ板を化学接着剤で張り合わせた「合板」や、木のチップを接着剤で固めたパーティクルボードなど、素材が木であるというだけで、工業的に作り出された新建材ばかりで作られた「木の家」も少なくはありません。見た目は木であってもこれを「自然素材住宅」とは言えないと思います。
 私達が作る「本物の木の家」とは、山の木を伐って製材した、自然のままの木(無垢材)を材料とした住宅です。見た目だけの木の家とは、住み心地、香り、安らぎ感などの気持ちよさが違います。
また、私達は、木材だけでなく、土(壁)や瓦(屋根)や塗料に至るまで自然素材を使います。
 自然素材が持つ調音調湿機能による心地よさは実際に見て触れて感じるものだと思います。
 ですからご自分の住まいを探していらっしゃる方へは、チラシ、カタログをじっくり読むより、まずは展示場など実際の建物を見に来ていただくことをお勧めします。
柱や梁で組まれた「木組み構造」の「無垢材の木の家」…E棟2階


木造建築物は、地震に弱いのではないですか?
 昨年・今年と大地震が続いています。この地区にも東海大震災が起こる可能性が高く、木造建築に住む方にとっては大変興味のある点だと思います。
 地盤のくずれなどで建物自体が完全に崩壊してしまう場合は別ですが、伝統木造建築の木組みの家は、木の特性をうまく利用して組んでいるため、柔軟に地震力を受け止め、また復元するしなやかさを持っています。ですから傾いたとしても、建て起こして使うことができるのです。近年の建物はたしかに免震・耐震構造に長けたものが多く、木組みの建物よりもずっと強く固く作ってあります。例えていうと、地震の揺れに対し柔らかく受け流す(制震ー木組みの家)のと、揺れに対抗しつづける(耐震ー鉄筋コンクリート構造の家)という2つの技術の違いと考えてください。
 昨年の新潟地震調査報告によると、「最初の揺れで大きく傾いたのに、次の余震で元に戻った」古い木造家屋の例があげられています。揺れによって家が傾けば、漆喰ははがれますし、土壁は崩れます。しかし、建物の骨格となる柱や梁が折れていなければ、壁や屋根は修復できるものであり、直せばまた住むことができるのです。強く固く作られた家は一度傾いてしまうと元に戻ることはほとんどなく、壊して建て直すことになります。
 また、地震の時にタンスや本棚などの家具が倒れてくることによる被害も多くあげられます。
 大針ビレッジの特徴のひとつに「作りつけ家具」があります。これは建物と収納家具が一体になった構造と考えてください。入居後家具を持ち込まず、作りつけ家具のみを使っていただければ、倒れてくる危険物は減るはずです(棚上部には軽くて落ちても安全な物を置くことが望ましい)。
作り付け家具を随所に配置 壁はしっくい…A棟2階
 木造建築物は、最新技術を使ったビルのような建築物と比べても、現在では構造計算がなされており簡単には傾くようなこともありませんので安心です。

 地震国日本では大昔からいくつもの大きな地震を乗り越えてきました。ここ何年かの大地震では、しっかり作られた木造住宅が倒れずに残っていた例が多くあり、伝統木造建築は、耐久性の面から環境にもやさしく、永く住まうことができる点で今また見直されてきているのです。