▼ご案内
今回は、この個展に出品されました、太田たけしさんと判冶(はんじ)そのえさんのインタビューを、展示の様子とともにご紹介します。

就職のため、実家を離れて暮らす娘さんに宛てた絵手紙を展示。
書いた絵手紙は、4年で約350通あまり。
今は同居されているそうだが、たまには絵手紙をかいて、部屋のドアに挟んでおいたりもするそうだ。

会場の様子

色とりどりの美しい絵手紙が並ぶ。
顔彩で描かれたイラストもすばらしいが、随所に使われている素材がおもしろい。
古くなったり、虫くいになってしまった着物の切れ端や、包装紙を利用してイラストの一部としたものなども。

▲古布を使って夜空を表現 ▼竹筒に入れて郵送
竹の子が一晩で何10cmも伸びる話をつづった“巻き絵手紙”は、封筒ではなく“竹筒”にいれて郵送。竹筒の元は水羊羹の入れ物。

中には古い着物を洗った後、洗濯機に溜まった繊維クズが捨てがたく、鳥に見たてて利用したものもあり、発想力の豊かさに驚く。
「同じ素材でお父さんのヒゲも作りました(笑)」


▼封筒にもちぎり絵が

▼さまざまな素材を使ったカレンダー

そんな彼女の絵手紙感を伺った。

絵手紙との出会いは、筆の先端を持って、墨でゆっくり描くものでした。
とても素朴で温かいものです。
ある日、カラー紙を頂いたのを機に、絵手紙は手紙だから何でもいいと思い、紙をちぎり、布を貼り、自分なりの手紙をかき始めました。
手紙は相手の事を思って書くもの、気持ちがこもっていればいい。
イメージ通りの紙を探すのは大変だけれど、私の手紙に使っている素材は身近にある普通のものだからいつでも誰にでもできるの。
要は楽しく描くもの、心で書くもの。自分のことを思って出してくれる手紙に上手も下手もない。誰かが思ってくれること、それだけでうれしいもの、そう思いませんか?

なるほど彼女の手紙の中で使われている素材は、包装紙・新聞紙・雑誌・チラシなどどこにでもあるものばかりだ。

ハガキからはみ出してしまった魚 シッポにもお便りが

▼展示場の隅のテーブルの上には・・・
展示部屋の隅に置かれた机には、彼女からのメッセージと見学者から彼女へのお便りが。
「私の絵手紙を見てくださった方の中には、涙してくださる方もいる。驚きました。うれしいことです。
きっと、作品を作ろう・賞を取ろうと思ってかいているわけではないから、私の気持ちをこめた本物の手紙だから、私の思いを感じとってくださったのでしょう。」と判冶さん。

手紙は出し手と受け手の双方向のコミュニケーション。
受け取った方からのよろこびが返ってくる。先日も手紙を出した方から電話で喜びの声が届いた。本当にうれしいことだと思う。

パソコン、携帯メールにより、筆を持って何かを「かく」ことが少なくなってきた今、
「絵手紙だからこそ描き手の思いを伝えられることがあるのではないか、受け手に喜んでもらえるものがかけるのでは。自分のことを思って描いてくれた手紙が届くのはとてもうれしいことです。手元に残る手紙は永遠の財産になります。娘のもとにある絵手紙は、私が残してやれる唯一のものであり、また私の絵手紙の足跡でもあるのです。」
と語ってくださったのが印象に残った。>>>
▲判冶さんと朝日のぼる(ライフスタイルアドバイザー)